「あしあと」「あしあと」マーガレット・F・パワーズ ある夜、わたしは夢を見た。 わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。 暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。 どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。 一つはわたしのあしあと、もう一つは主のあしあとであった。 これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、 わたしは砂の上のあしあとに目を留めた。 そこには一つのあしあとしかなかった。 わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。 このことがいつもわたしの心を乱していたので、 わたしはその悩みについて主にお尋ねした。 「主よ、わたしがあなたに従おうと決心したとき、 あなたは、すべての道において、わたしと共に歩み、 わたしと語り合ってくださると約束されました。 それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、 ひとりのあしあとしかなかったのです。 いちばんあなたを必要としたときに、 あなたが、なぜ、わたしを捨てられたのか、 わたしにはわかりません。」 主はささやかれた。 「わたしの大切な子よ。 わたしはあなたを愛している。あなたを決して捨てたりはしない。 ましてや、苦しみや試みの時に。 あしあとがひとつだったとき、 わたしはあなたを背負って歩いていた。」 (太平洋放送協会刊「あしあと」松代恵美訳) |